宝塚歌劇団の悲劇に思う

ドレッシングの空き瓶を利用したミニバラの一輪挿し

世界に例のない、女性だけで演じられる、日本独自の歌劇(オペラ)を主催する宝塚歌劇団で、創立110年になる歴史史上で初めて劇団員の不審死という不幸な事件が起こりました。亡くなられた劇団員の家族は先輩によるパワーハラスメントが繰り返し行われていたことと、長時間労働による心労と苦痛に耐えられず自死したとして、宝塚歌劇団側に謝罪と損害賠償を求め提訴されました。

何故このような痛ましい悲劇が起こってしまったのでしょうか、私は宝塚に移り住んで45年以上が経ちますが、宝塚という街は宝塚歌劇団と共に歩んできた印象が強く、宝塚歌劇団は宝塚のシンボル的存在で、誇りでもありました。今回の件は宝塚一市民としても驚きを禁じ得ません、このような思いは全国の宝塚ファン、世界の宝塚ファンも、持たれたと思います。

宝塚歌劇団の一員になるためには宝塚音楽学校を卒業しなければ夢はかないません。毎年春に行われる宝塚音楽学校卒業式は、晴れて憧れの宝塚歌劇団の一員になる夢がかない全身で喜びの表情を見せている卒業生、続いて全国から競争率20数倍の難関を勝ち取った新入生の歓喜に満ちあふれた表情の入学式、この二つの喜びのニュース映像を毎年見るたびに、我が子のことのよう嬉しく思っていいました。

しかしこの後卒業生はすぐに、新入生は2年後には劇団員になります。劇団内では巷間言われているような、パワーハラスメント長時間労働が待ち受けているとは誰一人たりとも想像できなかったのではないかと思います。夢と希望に満ちあふれた未来が、辛くて、苦しくて、悲しいいばらの道を歩まねばならない現実を知った時、歌劇団員の皆さんはどんな気持ちになられたのかを思うと心が痛みます。

最高の歌劇(オペラ)を創り、宝塚ファンを楽しませるためには、芸術性を高める鍛錬を日々重ねておられることは、想像に難くないと思います。しかしいくら芸術性追求の為の稽古だからといって一人の人間を、死に追い詰めるようなことは、決してあってはならず、許されるべきものではありません。

今回の宝塚歌劇団パワーハラスメント問題で当事者である歌劇団員に対するマスコミの取材攻勢があるようですが、一様に口をつぐんでいて劇団員からは正確な情報が得られないのが実情で、これは劇団側が劇団員に対し強い箝口令が敷かれていることによるものと思います。

いずれにしても宝塚歌劇団は表向きの、華麗で、華やかな世界と、裏の閉鎖的で、パワーハラスメント的体質の二面があるようで、このギャプの大きさは宝塚ファンにとっては大変悲しい事です。宝塚歌劇の部外者の私などは、宝塚歌劇団の中は先輩、後輩が和気あいあいとした雰囲気の中で、切磋琢磨しながら芸術の道を追求されていると想像していましたので、ショックは少なからずあります。

一度失った組織の信用を回復するのは容易なことではありません。この際劇団員全員もう一度宝塚歌劇の原典に戻り、夢をいだいて入学、卒業した宝塚音楽学校時代の事を思い出して欲しいと思います。初心に戻る事は決して悪い事ではなく、むしろ学ぶことも沢山あるのではないかと思います。裏表のないファンに開かれた、明るくて、楽しい、芸術性を追求した女性だけの歌劇(オペラ)を目指して欲しいと思います。

劇団員に対する給与、休日、社会保障といった福利厚生面の充実した環境も整えて劇団員が安心できる宝塚歌劇団を目指して欲しいと思います。