年収の壁という言葉をマスメディアを通して良く耳にします。この年収の壁とは一体どういう意味何でしょうか。調べてみますと年収の壁はパート、アルバイトで短時間働く専業主婦「第三種被保険者」が働き方によっては、所得税、住民税、社会保険料「健康保険料、厚生年金保険料」が発生する事によって、収入の手取り額が減少するボーダーラインのことです。年収の壁には住民税が発生する100万円の壁、所得税が発生する103万円の壁、配偶者特別控除が満額の38万円から減少し始める150万円の壁、配偶者特別控除がゼロになる201万円の壁です。以上の四つが税制上の壁です。もう一つの年収の壁が社会保険「健康保険、厚生年金保険」に加入する義務が発生する106万円の壁と、親または配偶者の扶養から外れる130万円の壁の二つです。106万円の社会保険の壁は勤務先の従業員が101人以上、10月からは51人拡大されます。月額の賃金が8.8万円以上、雇用期間が二か月以上で、学生でなければ社会保険に加入しなければなりません。130万円の壁は収入が130万円以上になれば、親または配偶者の扶養から外れ自ら勤務先の健康保険、厚生年金保険に加入しなければなりません。勤務先の会社が社会保険適用でない事業所の場合は、住いのある市町村で国民健康保険、国民年金保険に加入します。税制上の壁である100万円、103万円、150万、210万円についてはそんなに大きな手取り額の減少にならないので、税制上の壁についてはあまり意識しなくてもいいのではないかと思います。
年収130万円の壁の130万円で社会保険に加入した場合としなかった場合ではどれだけ手取り額が減少するのかみてみましょう。年収130万円で社会保険に加入した場合の算出法は厚生年金保険料は収入の18.3%で130万円×0.183=237900円、健康保険料は収入の10%で、130万円×0.1=130000円、合わせて367900円が社会保険料で、これを会社と本人で折半にしますので本人負担分は183950円です。
収入が130万円の場合は所得税、住民税も発生しますのでこれらも算出してみます。所得税は収入から社会保険料183950円と給与所得控除55万円、基礎控除48万円差し引いた86050円が課税所得になり、所得税率5%を掛けた4303円が所得税になります。住民税は収入130万円から社会保険料183950円、給与所得控除55万円、住民税基礎控除43万円を差し引いた136050円が課税所得になり、住民税率10%を掛けた13605円が所得割になり、これに均等割りの4000円を加えた17605円が住民税になります。130万円の収入で社会保険に加入した場合の手取り額は社会保険料の183950円、所得税4303円、住民税17605円を差し引いた金額の1094142円が手取り額になります。
収入130万円で社会保険に加入しなかった場合の算出法は次の通りです。差し引かれるのは所得税と住民税です。所得税は収入130万円から給与所得控除55万円、基礎控除48万円を差し引いた27万円が課税所得になり、所得税率5%を掛けた13500円が所得税になります。住民税の所得割は収入130万円から給与所得控除55万円、住民税基礎控除43万円を差し引いた32万円が課税所得になり、住民税税率10%を掛けた32000円が所得割でこれに均等割りの4000円加えた36000円が住民税になります。社会保険に加入しなかった場合の手取り額は、130万円から49500円を差し引いた1250500円です。
このように社会保険に加入すると、しない時に比べ年間15万円程度手取り分が減少します。厚生年金保険料の自己負担分は将来に備えての、貯蓄だと考えれば納得できるのではないかと思います。巷間では年金は掛けても本当にもらえるのか、という話を耳にする事がありますが、確かに日本は少子化が進んで人口減少により、年金受給者は増えてきますが、新たに厚生年金保険に加入する人は減少しています。そういう意味でも厚生年金保険制度を恒久的に安定させるためには、より多くの厚生年金保険加入者が必要です。そのためには厚生年金保険の加入条件の規制緩和を行い、零細中小企業で働く人でも容易に加入出来る仕組みつくりが、厚生年金保険問題の解決の糸口になると思います。そして年金問題の解決は、人手不足問題と低迷している日本経済にとっても明るい材料になることは、間違いないので、厚生年金保険加入の規制緩和ぜひ実現して欲しいものです。